ごあいさつ
琉球錫器の伝統の灯が消えて長い年月は過ぎ、本格的な調査がはじまったのは2000年代に入ってからでした。すでに錫文化の存在や価値は忘れ去られた時代になっており、現存する貴重な祭祀道具の傷みはかなり進行してしまっていました。伝統工芸の担い手として、沖縄にルーツを持つ身として、そのような状況を見過ごせず2015年、工房の立ち上げに至りました。工房名『金細工(カンゼーク)』は沖縄の言葉で金属工芸を意味し、『まつ』は故郷沖縄に帰りたがっていた祖父の名をつけました。消えてしまったような琉球錫文化ですが目を凝らしてみると焼物や舞台、言葉などあらゆるところに痕跡は残り、可能性さえ示されていました。工房では琉球金工品の研究や復元製作のほか、琉球錫文化の新しいカタチを提案しています。また、ワークショップでは制作体験だけでなく「当時の使い方」や「高度な製作技術」の話など琉球錫器の歴史を今に伝える活動もしています。
作り手
上原 俊展 うえはら としのり
1978年生まれ
学生時代から金属工芸やデザインを学び、伝統工芸高岡銅器の現場で職人としての腕を磨きました。
傷みゆく琉球錫器と忘れられゆく錫細工(シルカニゼーク)、そして戦後沖縄文化を支えた鍋職人の現状に強く心を揺さぶられ工房を立ち上げました。
つくり続けてきた中でたどり着いたものづくりの重要な要素『ひと・もの・ところ』の密接な繋がりを大切に制作しています。